香港MBA留学記

香港科技大学MBA留学で経験したこと、考えたこと

北京の思い出

6/18~7/15まで、中国語の研修で1か月北京に留学した。既に8月になってしまっているが、忘れないうちに北京での一ヶ月のことを簡単にまとめておきたい。香港に来てからはプログラムでのストレスもそれなりにあるので、思い返すとあの一ヶ月の方が本当に気楽に楽しめていたような気がする。もっとも、得たものもとても大きかったのだが。

 

到着~入学 

6/16にプロジェクトの最終報告&最終出社&送別会を済ませ、翌日徹夜で引っ越し準備と荷造りをしたのち、6/18の朝8時に北京に出発。5時間ほど到着が遅れて21時頃着。コンサルタントになりたての頃に買った思い出深いスーツケースを中国東方航空に壊され、大クレーム(これはこの後一週間尾を引き、結局チンピラのようなエージェントから現金400元を受け取り一旦決着)。Airbnbの宿の場所が見つからず、小区の警備員のような人に50元を握らせ案内してもらうも夜遅かったために大家が開けてくれずにホテルで一泊。

 

 

一夜明けて、早速中国語の学校に登校した。Beijing International Communication College(BICC)という学校なのだが、これはHKUSTが正式に薦めてきた清華大学のプログラムとは異なり、授業時間1.5倍で授業料半分ぐらいの学校を日本人同級生のK君が見つけてきた学校である。教師によるバラつきは大きいと感じたが、それでも圧倒的にコスパが高いと思われるので、来年以降の入学生にはお勧めしたい(もっとも、後述するように授業は半分ぐらいしか出なかったのだが)。同級生には伊藤忠から派遣で来ている日本人も二人おり、この学校で半年でHSK最上級の6級を目指すのが習わしだというから、それなりの実績は保証されているかと思われる。

 

今年は、HKUSTから僕とK君に加え、インド人のA、UK/香港ハーフのAの4人がこの学校に通っていた。HKUSTの正式プログラムの方は、マレーシア/UK/香港のC、インド人のRとA、ドイツ/南アフリカのP、アメリカ人のPなどが通っており、すぐに交わって一緒に飲むようになった。

日々の生活

朝9時~12時半に2クラスあり、これは入学時のレベルに応じてクラスが割り振られた。自分は日本人K君と、HKUST生以外のドイツ人の3人のクラス。なお二つ目のクラスの先生とどうしても馬が合わず、こちらは結局2回だけ出席してあとはスキップすることになった。午後は2時から3時半までマンツーマンクラスがある。

 

日本人のK君は恐らく全ての授業にしっかりと出席していたが、自分は全体として半分くらいの出席率だっただろうか。出席していない時間でも、結構しっかりと中国語の学習はしていたのだが、やはり終わる頃にはK君の方が上達していたと思う。

 

Airbnbの家は三里屯という北京でいえば表参道のような場所にあり、そこからレンタル自転車で10分ぐらいかけて通学していた。夜になると以下の写真のような感じでキョンシーでも出てきそうだし、エレベーターなしの5階住まいだったりしたのだが、意外と快適に過ごすことができた笑

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北京での所感

全体として

HKUSTのMBAプログラムを選択し、必須でもない中国研修に行ったともなると、さぞかし親中派と思われそうだが、自分はもともとあくまで「中国にアレルギーがない」程度の人間であり、むしろ東南アジアでのキャリア志向が強い。しかし東南アジアでビジネスをするとしても華僑・中国経済の影響は無視できないところなので、「仕方なく」中国のことも学ばなければいけないかな、といった程度のモチベーションであった。今にして思えば、中国に対しても中国人に対しても、どこか閉鎖的で薄暗いイメージと偏見に満ちていたと思う。これまでプロジェクトで中国が絡む論点に出くわすと、いつも「中国はよくわからない」「難しい」と感じていた。

 

ところが、一ヶ月の北京滞在はそうした偏見を一掃してくれる結果になった。中国ビジネスに前向きに取り組みたいという志向になり、そこにある大きなチャンスを見据えたいと考えるようになったのが、今の正直な感想である。

中国経済

一人当たりGDPではまだまだ日本の方が高く、栄えているとされる沿岸部、その中でも首都北京は中国の中でも圧倒的に豊かな都市であるはずだが、平均的な市民の暮らしはやはり日本の方がまだ豊かである。都市内でも貧富の差は激しいため、高級外車やセグウェイ(一日に一回は交通手段としてセグウェイが走り回っているのを見かける)が走っている横で、三輪のトゥクトゥクや自転車が爆走している。

 

しかし、一部の豊かな人達のリミッターは外れている感がある。例えば工人体育館の周辺はクラブ街になっているのだが、これらクラブの前には日々これでもかというほど高級外車が連なっている。ELEMENTSというクラブはこれらの中でもかなり盛り上がっている方なのだが、それでもダンスフロアとVIP席の比率は東京の比ではない。殆どがVIP席。

 

そして、中国経済が既に明確に日本よりも進んでいる点がある。電子決済・レンタル自転車・宅配サービスである。もっとも、レンタル自転車にしても宅配サービスにしても、WeChat PayやAlipayのようなスマホ電子決済が普及しているからこそ発展を遂げている。Mobikeやofoといった街中のレンタル自転車のQRコードにスマホをかざすだけで、自動的に決済が完了すると共に解錠される便利さには感動した。外食の宅配サービスも非常に一般的なのだが、頼んだものが入っていない時などには、配達員と一旦WeChatで友達になり、返金のやり取りをしたりすることもあるらしい笑 日本なら考えられないし、日本にいた時なら「せめて店の公式アカウントを複数の配達員で利用可能にするべきじゃないのか。セキュリティに不安が残る云々」などと感じていそうだが、中国にいると「まあそんな面倒なことしなくていいんじゃないの」と考えるようになるし、「そういうつまらないこと言ってると遅れるよ」とすら思うのである。何しろ、北京の街は既にオレンジのMobikeと黄色のofoで埋め尽くされているのだが、これとてほんのこの半年で普及したものだというのだから、変化の速度には驚かされる。誇張なしに、今では普通のおばあさんがスマホをかざしてレンタル自転車を決済・解錠して乗り回しているのである。

 

また、街並みは予想以上に美しかった(少なくとも三里屯周辺に限れば)。ポイ捨てなどのマナーが、ここ数年で劇的に改善してきているらしい。これも、自分としては大きくイメージが覆された部分であった(なお、少し道を入るとお母さんが子供のズボンを下ろして小便させていたりする光景に日常的に出くわす)。

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 なお、大気汚染は如何ともし難いレベルで最悪である。一週間ほど過ごしたのち、頭痛と共に鼻水が止まらなくなり、以後なるべくマスクをつけて行動するようになった。夏は冬に比べれば相対的にPM2.5の濃度が低い&夏場は空気がそこまで澱まないことからマスクをつけていない人も多いらしいのだが、しばらく北京に滞在した人であれば身の危険を感じるレベルで空気が汚れているとわかるはずである。

中国人

自分はいらぬ差別感情などを持っているタイプの人間ではないが、それでも大陸の中国人に対して、手放しでポジティブな感情を持っていたわけではない。つまり、少なくとも平均的に「マナーが悪い」「声が大きい」「不親切」といった印象を持っていた。

 

約一ヶ月を過ごした感想としては、まあ全般としてはマナーも悪いし声も大きいのだけど、思っていたよりもずっと親切な人が多いと感じた。あくまで浅い経験であるし、実際に中国人にこの感想を伝えたところ、「北京の中心部に限ればそれはそうだ」とのことではあるのだが、事前に抱いていたイメージは十分に覆された。

 

正確にいうと、彼らは「自分の輪」の中にいる人たちに対して親切であると感じたのである。即ち、中国人同士であっても、他人同士では非常に冷たい。言語特性もあると思うが(中国語では聞き返す時に啊?と言うが、これが日本人からするとチンピラが「あぁ?」と言っているように感じる)、人口が多い故に万人が万人に対して常に闘争をしているようにすら感じる。その一方で、家族・恋人・友人といった、自分の身の回りの人たちにはとても優しい。

 

必ずしも血縁や友人でなくても、「ふところ」に入りさえすればとても親切にされる可能性すらある。一度、カルフール(家乐福)に行こうとタクシーに乗った時、「カルフールは一杯あるんだよ!どこの!?」と凄まれ、Google mapを見せても不機嫌が収まらずに怖い思いをしたのだが、「わたし、中国語、勉強中。ごめんなさい」というようなことを中国語で伝えたところ、急に態度が軟化して話が弾むようになり、最後には勉強頑張れよと言われ握手を求められた上で和やかに下車したという経験があった。敬愛する川崎さんのブログでも、第三外国語は相手の文化へのリスペクトを示すツールだという指摘があったが、自分がこれから中国語を勉強する第一の目的は、まさにここにあると感じた。

 

もっとも、しばらく味をしめてタクシーに乗ったり銀行口座を開設したりする際に「わたし、中国語、勉強中」を連発していたものの、同じ経験は再現せずに何度も「啊!!??」と怒鳴られ、机を叩かれたりすることになるのだが。

中国語

北京は、一部のレストランやクラブでないと、基本的に英語は使えない。そうはいっても日本人はやはり漢字が読めるのが最大の強みで、レストランのメニューを見ても「この辺は麺類だな」「これは飲み物で、これはたぶんコーラ」というのは、中国語を勉強していない人でもわかる。

 

そこに来ると非漢字圏の人は本当に大変そうで、同じクラスにいたドイツ人は、ドイツでの仕事を辞めて北京で働くべく乗り込んできたそうなのだが、既に3か月ほど授業を受けたものの習得の進捗は極めて緩慢なようであった。

 

既に漢字をたくさん知っている日本人にとって、時制も動詞の変化もない中国語は、極論すれば漢字・単語の発音をひたすら覚えていくということにある。これは、外国語学習において、日本人が持っている数少ない強みである。中華の影響力が増していくのが避けがたい21世紀において、下手に中途半端な英語を勉強した人材を作るよりも、中国語に特化した方が習得可能性はあるのではとすら感じる。もっとも、向こうには一部のコンテンツファンを除いて日本語を勉強するモチベーションのある人はいないので、中国の属国として一方的におもねる色彩が強くなるため心情的には受け入れ難いところではあるのだが。

 

結び

毎日色々と衝撃的なことが起こり、そのたびに考えたことも沢山あったので、もっとこまめに記録をつけておけばよかったなと思うのだけど、仕方ない。中国語の学習はまだまだ途上だが、少なくともこの北京研修に行ったのは大正解であった。

 

HKUSTでは12か月間の香港でのプログラム終了後、4か月間交換留学に行くチャンスがある。これまではIESEかNYUに行きたいと考えていたのだが、上海のCEIBS(中欧国際工商学院)も現実的な選択肢として検討していきたい。