香港MBA留学後記

留学、その後

深圳勉強会に参加して

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昨夜は香港和僑会が主催した、東京大学の伊藤亜聖准教授による「第142回定例会「イノベーション都市としての深圳~新世代ベンチャー企業とエコシステム~」という勉強会に参加してきた。

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深圳で何が起こっているか

伊藤先生のオリジナリティを侵害しない範囲で、自分用の簡単な記述に留めておきたい。

中国の大トレンド

  1. 高度化
  2. 調整
  3. 拡張

上記1の実現という文脈の中での深圳の位置づけと、1と3を掛け合わせを推進するための軸としての深圳

イノベーションを支えるエコシステム

  1. 成熟したサプライチェーン
  2. オープン・モジュール化した産業構造
  3. 上記にマーケティングとクリエイティビティを付加する仕組み

上記の結果、一日に200社を超える企業が創業

深圳の弱みと課題

  1. ソフトウェアとコンテンツの弱さ
  2. 不動産価格の高騰(若年人材の吸引力低下)
  3. 国の関与が深化する可能性

思ったこと

レガシーをどう打ち破るか

先日、長く製造業の経験をお持ちの方のお話を頂戴する機会があったのだが、その方は開口一番に「深圳で作っているものなんて、オモチャですよ」と仰っていた。

 

伊藤先生が述べておられた事例の一つに、深圳のレストランではレストランの席につくとQRコードをスマホで読み取り注文、決済もスマホで完了するという購買行動が既に実現しているというものがあり、これは20代・30代が人口の60%以上を占めている社会構造も一助になっているだろうとのことである。例えば日本で同じことをやった日には、「現金支払いも可にしろ」「情報弱者を置き去りにするな」と騒がれる可能性すらあるだろう。中国では、例のポイント制による就労ビザ要件の厳格化の件でも、高齢者ほど付与するポイントが低く設計されるなど、国の発展のために若年層を優遇する思想が明確に出ており、これだけ少子化が叫ばれている中で保育園の設置に真顔で反対している高齢者が我が物顔で権利を主張するような日本とは基本的に真逆の考え方である。人口ピラミッドを明確に反映しているという点ではなるほど民主化が実現できているといった点も、こうした構造を打ち崩しがたい背景となってしまっている。

 

もっとも、伊藤先生のお話を踏まえれば、中国全体が常に破壊的イノベーションを進めまくっているというわけでもなく、あくまで深圳には上海・北京のようなレガシーが存在していなかったということも発展の重要な要素の一つのようである(つまり、破壊する対象がなかった)。

課題を直視する心

我々が圧倒的に認識しなくてはならないのは、これまで日本が強みを発揮してきた「品質」「洗練」といった側面でも、中国企業は確実に力をつけつつあるということである。

 

伊藤先生のお話の中でも紹介があったのだが、深圳発のドローントップシェア企業DJIの最新製品Phantom 4のプロモーション動画を見て、どのようなことを思うか。

www.youtube.com

 

ローランド・ベルガーの遠藤会長が長江商学院で教鞭を取っておられた際、中国のマネージャー達が自ら「品質面で劣る中国製品」を強烈に認識した上で、その改善へのヒントを探るべく日本企業の「現場力」を必死で学ぼうと食らいついてくる熱気を感じたそうである。いつか品質面で追いつかれたとしても、それでも日本に残る優位性とは何か?という点も、伊藤先生のお話の中にヒントがあったように思う。それを真摯に追うことを目指すとすれば、まず過去の栄光にすがらず、今の課題を直視する心を持つことがスタンスとして必要であるはずだ。仮に深圳で作っているものが自分の会社の製品に比べて「オモチャ」だと感じたとしても、である。 

DJIとの取引に稟議を通せない日本企業

伊藤先生曰く、これだけ深圳にポテンシャルがあっても、深圳のベンチャーとの取引を忌避する日本企業は多いのだそうで、既にドローンで世界市場を席捲しているDJIのような企業相手でも、これは一般的な傾向であるそうだ。

 

「深圳がすごいらしいから行ってこい」というトップの意向で深圳に赴き、ビジネスチャンスを発掘してもいまいち日本本社には温度感が伝わらず、結果陽の目を見ないという流れが容易に想像できる。そこに来ると、したたかなシリコンバレーは深圳にベットしまくっている。

 

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引き続き、中国への理解を深めていきたい。