香港MBA留学後記

留学、その後

とある授業について

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ほとんどの授業が全8回で構成されているうち、とりあえず第3回が終わりつつあって、今のところ一番のお気に入りはManaging Organizationという授業。意思決定に際しての認知の歪みをどう自覚すべきか、リーダーシップのあり方とは、といったことについて、豊富な例え話や問いかけ・エクササイズなどによって理解を深めていく内容で、教授の話のうまさもあり素晴らしい授業だと思っていたのだが、クラスメイトの何人かから否定的な評価を聞いた。

 

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とある休憩時間中の雑談の中でこの授業に関する意見を求められたので、「一番気に入ってる授業だよ」と返したところ、

 

「あの授業は、楽しいだけ。実践的じゃない」

「当たり前のことしか言っていない」

 

というような言葉が返ってきたので、驚いた。いくらか反論しようとしたのだが、「そうだそうだ、楽しいだけだ」と何人かで畳みかけるように話が盛り上がり、休憩時間も残り少なかったのでじっくりと自分の意見を言うことができなかったのだが、その時に感じた違和感がどうも残っている。

 

要は、何を「実践的」と捉えるかの違いなのだと思う。これは、キャリアのどの段階にいるかどうかにもよるのだと思われるが、彼らがファイナンスや会計はいかにもすぐに使えそうなので実践的だと言っているだとすれば、それはせっかく大金をはたいているプログラムから得られるものを自ら縮めてしまっているのではと改めて思った。

 

そもそも、MBAの授業で学ぶ専門知識自体は、プロフェッショナルの現場で使うにはあまりにも浅い。例えば投資銀行にはビジネス知識を持たない学生も新卒で毎年多く入るが、彼らが入社後1年間でOJTも通じてゼロから学ぶファイナンスその他の知識は、MBAでファイナンスの授業を多めにとったぐらいの学生は遥かに凌駕するレベルにある。

 

ではMBAの授業は意味がないかというとそういうことではなく、(会計の授業はどうしても知識の伝授という側面が強くなりがちなのだが)例えばファイナンスの授業では、公式的な結論に至るまでの考え方、直観的な理解、現実世界への応用などについて、「これはどう考えるべきか?なぜそう考えるか?でもこういう考え方をすると君の考えは否定されるけど、他の考え方をする人はいるか?でもその考え方もこの点ではおかしいよね、結局どう考えるべきか?」という議論の中で展開されていくことで、結論の暗記に留まらない考え方そのものを身につけていくことにこそ価値があると思っている。

 

その点、個人的にはむしろリーダーシップ・国際経営のようなソフトなテーマの方がMBAのプログラムには馴染むと思っており、自分の努力も集中的に投下したいところ。

 

「答えがない」ことに文句を言う人もいる。しかし、「作業」を与えられる駆け出しの社会人からマネジメントに近くなるにつれ、扱うべき問題にはどんどん目に見えた答えがなくなっていく。とりわけ、様々なバックグラウンドや国籍の人が集うプログラムであるからこそ、答えの選択肢の幅が広くなる傾向にある。なので、「そうはいっても答えがある(ことが多い)」テーマよりも、価値観・人間力学の見方を戦わせるような体験を重視したいと考えている。

 

少し残念に思う気持ちがあったのは事実なのだが、人はどうあれ、自分は一つ一つのケースにおける悩みに深く共感することで、様々な境遇で答えの無さと向き合う気持ち悪さ・ストレスを感じる経験を大事にしていきたい。